MacBookAir Hack

photo-credit: syui
はじめに
今回、「特定秘密保護法案」というものが参議院に提出されて可決、成立しました。
「特定秘密保護法案」を取り入れた秘密保全法を要約すると、以下の様な内容になっています。
①行政の長は、自由に特定秘密を設定できる。
②特定秘密に近づいた者は、10年以下の懲役。秘密を漏らした人も同じく。
相当要約していますが、ポイントとしてはこんな感じです。
ここで、ポイントというのは、「行政の長」、つまり、一人の人間が「自由に」「特定秘密」を設定できるということ。
そして、設定された秘密を侵害した人または、侵害しようとした人は、「10年以下の懲役」、つまり、相当な重い刑罰で対処する、ということです。
法律とは
まず始めに、法律とは一体何なのでしょう。
法律とは、おおよそ、何らかの強制力をもって、一定の行為を制限するためのものです。
なぜ強制力が必要なのかというと、何らかのペナルティがなければ、誰も守らないことが予想されるからです。
例えば、法律に「人を殺すな」と書いてあった場合を考えてみましょう。
ここで、もし人を殺してしまった場合に、何のペナルティもなければ、その法律の目的が達成しづらくなってしまいます。
そして、その法律の目的とは、「人の生命を守ること」と考えられます。
わざわざ法律を作るという行為には、必ず、その法律を作った意図、法律の目的というものがあります。これを、法律の趣旨ということがあります。
条文とは
また、法律は、条文という複数の文章から出来上がっています。
そして、一つ一つの条文にも、その条文の目的というものがあります。これを、条文の趣旨ということがあります。
法律の趣旨
法律、特に新しく成立する法律を考えていく際には、この「法律の趣旨」というものは、非常に重要な視点になってきます。
もちろん、実務的な場面では、一番重要なのは、「条文」ということになります。
しかし、ここでは、細かい視点からではなく、広い視点から、「特定秘密保護法案」の是非を考えていきたいと思います。
なぜ広い視点から考えていくかというと、やっぱり、そっちのほうが分かりやすいし、順序的には一番適切だと考えるからです。
また、私自身が法律のことを全くわかっていないし、そもそもそういうことを考えてもいない人間だからというのもあります。
特定秘密保護法案の是非
目的
特定秘密保護法案の趣旨は、どういった点にあるのでしょうか。
それは、「国家秘密を迅速に保護し、国益を守る」という点にあります。
では、当該法律の各条文から上記の趣旨を推定していきましょう。
まず、多くの法律において言えることですが、1条に当該法律の目的が書かれている事が多いです。
ということで、1条を見て行きましょう。
第1条 この法律は,特に秘密にしておきたい日本の安全保障に関する情報を漏れないようにすることを目的とする。
この条文から、「国家秘密を保護したいんだなー」ということが何となく分かるかと思います。
手段
では、どういった手段で、この「国家秘密を保護したい」という目的を達成するのか。それが、次からの条文で記されています。
ちなみに、何らかの法案の是非を考える上では、ほとんどの場合、目的を達成するための「手段」がより重要になってきます。
なぜなら、「目的」というものは、正当で、理解できるものであることが多いからです。
よって、重要なのは、目的を達成するための「手段」が、どのような内容になっているかということになります。
思うに、この法案の目的自体に異議を唱えている人はあまり多くはないでしょう。
では、以下で、当該法案が「国家秘密を迅速に保護し、国益を守る」ためにどのような手段を採用するのか、見ていきたいと思います。
行政機関の長
3条には、特定秘密の指定について書かれています。
どうやら、「行政機関の長」が漏れたらまずそうな情報を特定秘密に指定できるみたいです。
このように、権限を個人に付与する規定は、「迅速」に情報を保護するために役立ちます。
しかし、その反面、個人を対象に、大きな権限を与えてしまう条文というのは、濫用される危険も大きいと考えています。
便利で効果が大きい法律には、こういった濫用の危険も大きくなってくるわけですね。
法律問題を考える上では、必ず上記のような二面性に注意を払っていく必要があると私は考えています。
確かに、現実の運用を考えた場合、個人に権限を与えたほうが効率がよく、人によっては適切で迅速な運用ができるでしょう。
しかし、大きな権限というのは、「道具」のようなものです。
そして、道具というのは、使い手次第でその運命を大きく左右してしまうものでもあります。
果たして、今現在の政治家に、非常に優れた道具を使いこなせる人がいるでしょうか。
私はこれについて大きな疑問を抱いています。
また、今現在優れた政治家がいて、権限を適切に使いこなせるとしても、将来はどうなるか分かりません。
もしかしたら、将来、暴君的な支配者が出てくる可能性だってあるわけです。
その点で言えば、濫用される危険が極めて高い権限を容易に個人に持たせてしまっては、基本的にはまずいのではないかと考えます。
10年以下の懲役
この法案には、他の法律と同じように、ペナルティが用意されています。
何のためのペナルティかというと、秘密を守るためのペナルティです。
具体的には、秘密に近づいた人や秘密を漏らした人には、10年以下の懲役等の罰則が用意されています。
これは、客観的に見てかなり重たい刑罰です。
また、適用範囲が非常に広い点も大きな問題です。
真の目的
では、建前はこれくらいにして、本音で書いていきましょう。
この法案の真の目的は、「外国(特にアメリカ)から情報を盗られないようにすると同時に、外国からの情報提供を促進する」ために作られた法案だと私は考えています。
どういうことかというと、最近、NSAからの諜報活動が話題になっているように、外国も当然、諜報活動というものを行っています。
これは、基本的に、世界平和のためとかではなく、自国の利益のために行われている行為です。
自国の経済を発展させるため、海外との交渉を有利にするため、その他様々な利益確保のために、国家間での諜報活動は、当たり前のように行われていると思います。
ここで、日本は、その主体でもあり、同時に、ターゲットでもあるので、これらの諜報活動をできるかぎり優位に進めなければなりません。
ここでいう諜報活動を優位に進めるためには、「防御」と「攻撃」をレベルアップさせていく必要があると考えます。
そして、この防御と攻撃のために、有効なのが、今回提出された法案、特定秘密保護法案ということになると政治家の方々は、考えているように思います。
まず、防御については、簡単ですね。
今回の法案が成立すれば、秘密を迅速に破棄できるようになります。秘密を破棄すれば、情報が海外に漏れるということを防げます。
また、攻撃については、少し難しい話ですが、以下で説明していきます。
これまで、日本は、情報管理があまりに脆弱だったため、情報が海外から得られないというような事態に何度か遭遇してきました。
なぜ海外から情報が得られないかというと、いつ漏れるかわからない相手に、重要な情報は渡したくないと思うのが通常だからです。
このように、この法案には、日本の国益に叶う真の目的があると私は、考えています。
そして、これは、とても崇高なことなのだろうと思います。
道具の使い方
しかし、私は、この法案には反対です。
その理由は、主に、道具の使い方にあります。
どんなに良い道具を持っていても、道具というのは、おおよそ、その使い手の力量に依存します。
私は、今現在の政治家には、とてもじゃないけど当該法案を上手く使いこなせるとは思えないし、むしろ弊害のほうが大きいように思えるのです。
では。